ペット関連商品やサービスに獣医師の力を

変わるペット業界──“モノを売る”から“暮らしをつくる”時代へ

ペット業界はいま、大きな転換期を迎えています。
市場が拡大を続ける中で、問われているのは「何を売るか」ではなく、「どう暮らしを支えるか」。
“ペットと人が共に生きる社会”を見据え、企業はどのように価値をつくるべきなのでしょうか。

ペット業界は「感情産業」から「生活産業」へ

ここ10年で、ペット業界は急速に成長してきました。
犬猫の飼育数はやや減少傾向にある一方で、1頭あたりの年間支出は右肩上がり
それは、飼い主が「ペットを家族として迎えた」ことを前提に、より豊かな生活を求め始めたことを意味しています。

かつてペット市場を動かしていたのは、“かわいい”“癒される”といった感情的価値でした。
しかし現在は、感情よりも「暮らしの質」が重視される時代に変わっています。

ペットを家族として迎えると、食事・医療・住環境・しつけ・防災など、生活のすべてがつながります。
この変化によって、ペット関連商材は「嗜好品」ではなく生活インフラの一部へ。

たとえば、

  • フード選びに栄養学や健康管理の知識を求める飼い主が増えた
  • 医療保険や定期検診の需要が拡大
  • “ペットと暮らす家づくり”など、住宅・不動産分野も参入

このように、ペットを取り巻く産業は、暮らしそのものを支える「生活産業」へと変化しています。
企業に求められるのは、「かわいさ」ではなく「暮らしを支える力」なのです。

変化する価値観──“かわいい”の先にある「責任」と「倫理」

ペットを家族とする社会が進むにつれ、消費者の目はよりシビアに、そして倫理的になっています。

たとえば──

  • フードやサプリの原材料・生産過程の透明性を求める声
  • 動物福祉・保護活動・サステナブル素材への注目
  • SNSでの“責任ある飼い方”や“共生マナー”への意識の高まり

これらはすべて、ペットビジネスにおける「社会的責任」が拡大していることを示しています。

今や商品そのものの機能や価格よりも、企業の姿勢・哲学・ストーリーが購買判断の基準です。
飼い主は、「この会社を信頼できるか」「社会に貢献しているか」という目線でブランドを見ています。

つまり、“感情”ではなく“共感”が動機になる時代です。
その共感を得るために必要なのは、美しい広告コピーではなく、誠実で一貫した行動。
企業の倫理観がブランド力を支える軸になっています。

「専門家の力」で築く、確かな信頼

情報があふれる時代、飼い主が求めているのは「誰かのおすすめ」ではなく、根拠のある安心です。
だからこそ、商品やサービスの提供者に問われているのは「どんな知見に基づいているか」という透明性。

たとえば、栄養学や行動学、動物医療など各分野の専門家と連携することで、

  • 商品やサービスの品質保証が明確になる
  • 科学的根拠に基づく正確な情報発信ができる
  • 飼い主に対して誠実な姿勢を示すことができる

こうした取り組みは、単なる監修やアドバイスにとどまらず、ブランドの信頼設計そのものです。

近年では、SNSや口コミで情報が一瞬で拡散します。
誤った情報が出れば、ブランドの信頼は一夜で揺らぐ可能性もあります。
だからこそ、「誰が支えているのか」「どのような専門的裏付けがあるのか」を明確にすることが、長期的なブランド戦略につながるのです。

作り手(企業)が専門家の知見を取り入れ、正確で誠実な情報を発信する──
それは“安心して選ばれる企業”への確実な一歩です。

「暮らしをつくる」発想が、ブランドを育てる

これからのペット業界では、“どんな暮らしをつくるか”がブランドの本質になります。
単に「モノを提供する」のではなく、「暮らしをデザインする」という視点が欠かせません。

たとえば、

  • 飼い主の生活リズムに合わせて健康管理をサポートするIoTデバイス
  • 災害時や高齢化社会を見据えた地域ネットワーク型の支援サービス
  • 再生素材・植物性原料を使ったサステナブルな製品

これらはすべて、“社会全体の豊かさ”を前提としたペットビジネスです。

「ペットを中心に、人・地域・環境がどうつながるか」という視点を持つことで、
企業の存在意義が“商品提供者”から“共創のパートナー”へと進化します。

実際、近年のヒット企業はこの“暮らしの共創”を実現しています。
飼い主の声を商品開発に反映し、専門家や自治体と協力しながら、ペットを中心に新しい社会モデルを描いているのです。

その結果、ブランドは「単なる選択肢」から、「信頼される存在」へと変わります。

信頼からはじまる、ペット業界の未来

ペット業界は、もはや“モノを売る産業”ではありません。
それは、人とペット、そして社会がどう共に生きていくかを描く“文化の一部”です。

企業が果たすべき役割は、商品を届けることだけではなく、
飼い主や地域、専門家と手を取りながら「より良い暮らし」を共に創ること。

“何を売るか”ではなく、“どんな暮らしをつくるか”。

この発想が、業界全体の信頼を高め、持続可能な成長を導いていきます。
そしてその先にあるのは、ペットも人も心地よく暮らせる未来。

企業と社会が手を取り合いながら、“信頼”を軸にした新しいペット文化をつくっていきましょう。

【記事執筆】

株式会社101 代表取締役 CEO

小川 類 / Rui Ogawa

2006年、株式会社ONE BRANDを立ち上げ取締役に就任。「犬と暮らすライフスタイルマガジンONE BRAND」を創刊、2年で発行部数10万部に。10年間編集長として携わりつつ犬の飼い主向けイベントやペットビジネスのコンサルティング、ユーザーマーケティングを行う。 2018年、ONE BRAND取締役を退任後、フリーランスとしてベンチャー企業のスタートアップ広報やペット向けWebメディアの立ち上げ、編集長としてメディア運営を行う傍ら、多くのペット関連企業の販促施策やマーケティングを企画実施する。事業規模の拡大に伴い2022年に株式会社101を創業。

株式会社101ではペットビジネス支援を行なっており、その一環として獣医師による商品監修サービス『獣医師監修ナビ』を運営している。

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