ペット関連商品やサービスに獣医師の力を

飼い主の“悩み”に寄りそうビジネスへ──ペットと人の暮らしを支える新発想

ペット市場の拡大とともに、飼い主の価値観も大きく変化しています。
求められているのは「モノ」ではなく「安心」と「信頼」。
この記事では、飼い主を中心に考えるビジネスの新しい形を探ります。

飼い主の行動が変わった──“選ばれる理由”は機能から共感へ

かつて、飼い主が商品を選ぶ理由は「価格」や「デザイン」などの分かりやすい要素でした。
しかしいまは、そうした“モノの良さ”だけでは選ばれません。
情報があふれる時代において、「なぜこのブランドを信頼できるのか」が購買の決め手になっています。

近年の調査では、ペット関連の購入で重視される要素として、

  • 安心できる情報発信をしている
  • 専門家が関わっている
  • 企業の理念や社会的活動に共感できる
    といった項目が上位に挙がっています。

つまり飼い主は、商品そのものではなく、売り手の姿勢やストーリーを選んでいるのです。

SNSを中心に、口コミや体験談の共有が活発になるほど、「誰が作ったのか」「どんな思いで届けているのか」といった“背景”が信頼を左右します。
ブランドはもはや商品名ではなく、“人と人との関係性”として存在する時代に入りました。

2. 飼い主の“悩み”を起点にする──観察から始まる価値創造

ペット関連ビジネスの多くは、「飼い主の困りごと」から生まれます。
しかし、飼い主自身がその課題を明確に言葉にできているとは限りません。

だからこそ、企業に求められるのは観察力と共感力です。
表面的なニーズではなく、“行動の背景にある感情”を見つめること。

たとえば──

  • 共働きで忙しい家庭では、「時間がない」よりも「十分に愛情を注げていない不安」が根本にある
  • シニアの飼い主は、「散歩が大変」ではなく「愛犬と過ごす時間を減らしたくない」という想いを抱えている
  • 初めてペットを迎える人は、「情報を知りたい」よりも「正しい判断をしたい」という安心を求めている

こうした“感情の解像度”を上げることで、企業は単なるモノづくりから一歩進んだライフサポート型の価値提案ができるようになります。

成功しているブランドほど、アンケートデータだけに頼らず、飼い主との対話やリアルな声の収集に力を入れています。
「顧客は答えを持っている」と信じ、寄り添う姿勢が、結果的にファンを生み出しているのです。

“専門知識×飼い主理解”で築く新しい信頼

飼い主の悩みに寄りそうビジネスに欠かせないのが、専門的な知見の活用です。
健康・行動・食事・安全──ペットの暮らしに関わるあらゆるテーマで、信頼される情報や商品を提供するには、根拠のある知識が欠かせません。

たとえば、

  • 栄養バランスを科学的に設計したフード
  • 行動学に基づくストレスケアグッズ
  • 動物医療の専門家による正しいケア情報の発信

これらはすべて、専門家の知見を取り入れることで、「感覚的な安心」から「根拠のある安心」へと進化しています。

飼い主にとって、“専門性”は選ぶうえでの重要な判断基準。
特にSNSやECでは情報が氾濫しているため、「信頼できる監修がある」という一言が大きな安心材料になります。

一方で、専門性だけを前面に押し出しても、人の心は動きません。
そこに「飼い主理解」が加わることで、初めて信頼は深まります。
つまり、専門家の知識×飼い主への共感力が、次のペットビジネスの価値軸なのです。

企業と専門家が協働し、飼い主に正確で温かい情報を届ける。
その積み重ねが、ブランドを「知識のあるメーカー」から「信頼できるパートナー」へと成長させます。

“共感と誠実さ”がブランドを育てる

今、飼い主が商品やサービスに求めているのは、“完璧な商品”ではなく“誠実な対応”と言い切れると思います。
トラブルやクレームへの迅速な対応、購入後のフォロー、そして正直な情報発信。
これらの積み重ねこそが、信頼のベースになります。

ブランドを育てるのは広告ではなく、日々のコミュニケーションです。
たとえば、SNSでの一言への丁寧な返信、問い合わせメールへの細やかな対応、スタッフの知識共有や顧客への教育コンテンツ。

こうした“地味な誠実さ”が、飼い主にとって最も心に残る体験となります。
ペットビジネスに限ったことではないと思いますが、特にペットという“大切な家族”に関わる商品やサービスは、信頼と共感を積み重ねる“文化づくり”でもあるのです。

飼い主の隣に立つブランドへ

ペットを通じて、人と人がつながる時代。
ペットビジネスが果たすべき役割は、モノを売ることではなく、飼い主の暮らしに寄り添うことです。

飼い主が安心して選べる情報を発信し、専門家と協働しながら、一人ひとりの想いを理解し、共に歩む。

“顧客”ではなく、“共に暮らしをつくる仲間”としての関係へ。

その視点の変化が、ブランドの持続力を高め、ペットビジネスの未来を豊かにしていきます。

【記事執筆】

株式会社101 代表取締役 CEO

小川 類 / Rui Ogawa

2006年、株式会社ONE BRANDを立ち上げ取締役に就任。「犬と暮らすライフスタイルマガジンONE BRAND」を創刊、2年で発行部数10万部に。10年間編集長として携わりつつ犬の飼い主向けイベントやペットビジネスのコンサルティング、ユーザーマーケティングを行う。 2018年、ONE BRAND取締役を退任後、フリーランスとしてベンチャー企業のスタートアップ広報やペット向けWebメディアの立ち上げ、編集長としてメディア運営を行う傍ら、多くのペット関連企業の販促施策やマーケティングを企画実施する。事業規模の拡大に伴い2022年に株式会社101を創業。

株式会社101ではペットビジネス支援を行なっており、その一環として獣医師による商品監修サービス『獣医師監修ナビ』を運営している。

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