9月は防災月間。ペットと防災と聞くと、「非常持ち出し袋に何を入れるか」「避難所でどう過ごすか」といった情報が多く発信されます。もちろん、それらも大切な備えですが、本記事ではペットビジネスを行っている、またはこれから始めようとしている皆さんに向けて、少し違う視点から「ペットと防災」についてお話ししてみたいと思います。
2011年の東日本大震災や熊本地震の後、私はペットと防災に関する取材を重ねてきました。印象的だったのは、獣医師であり動物行動学の研究者でもある、東京農業大学 動物科学科の増田先生のお話です。
「ペットとの防災は、“自助+ご近所”がカギです」
この言葉を聞いたとき、私はとても腑に落ちました。災害時に必要なのはまず自分自身の備え=“自助”ですが、それだけで乗り切るのが難しいのが現実。ペットと暮らすうえでは、周囲との関係性やちょっとした気遣いが、安心と支えにつながることを、取材や実際の声から何度も感じてきました。
「自助+ご近所」は、飼い主さんにとっても、そしてペットに関わる仕事をしている人にとっても、ぜひ心に留めておきたいキーワードであり、マインドだと思います。
たとえば犬を飼っている家庭であれば、日常的に散歩の際にご近所と顔を合わせる機会があります。そうした日々の挨拶や交流が、災害時には大きな安心感や助け合いにつながります。
これは犬に限った話ではありません。たとえば猫の場合も、自宅避難をしている間にご近所の支援が必要になる場面が多くあります。実際、停電や断水で生活が制限される中、「お隣が猫砂を分けてくれた」「ご近所の人が様子を見に来てくれた」というような助け合いのエピソードもあります。
猫は家の中にいる動物なので犬よりもその存在が見えにくいですが、だからこそ“孤立しない”準備として、ご近所との緩やかなつながりが重要になります。
増田先生が提唱していたもう一つの考え方が「備蓄の分け合い」です。
ペットを飼っている家庭では、ペット用のフードやおやつ、トイレ用品などを防災バッグに入れて備えている方も多いと思います。でも、そこに“もうひとつ”の視点を加えてみてください、というお話でした。
「お隣さんのペットの分も、少しだけ多めに準備しておく」
たとえば、ドライフードを1袋多めに入れておく、水をペットボトル1本多く用意しておく。たったそれだけでも、いざというときにご近所で暮らすペットの助けになるかもしれません。
こうした準備は、単なる思いやりではなく“レジリエンスの高い地域社会”(難しい言葉ですが、回復力や柔軟性のある地域社会、というような意味です)をつくる一歩とも言えます。
防災からは話が外れますが、この“ご近所視点”はペットビジネスの差別化や価値づくりにもつながる重要なヒントになるのではないか、と思っています。
ペット用品やサービスは、単なる“プロダクト”ではなく「毎日の暮らしに寄りそうモノ」。だからこそ、「飼い主とペットの快適さ」だけでなく、ペットを飼っていない人や苦手な人もいる自分の周囲=ご近所の中で、どう存在させていくかという視点を、商品やサービスを開発する時、ブランディングやマーケティングを考えるときに頭の片隅に置いておくことがとても大切です。
ペットとの暮らしは「我が家」だけのものではなく、お隣さん、ご近所、地域、社会と関わっている──その視点は、ペットビジネスにおける商品開発、PR、ブランディングすべてに応用可能であり、かつ不可欠なものと言えます。
私たちは、ペットビジネスを「モノの売買」ではなく、「暮らしをつくるもの」と捉えています。
「自助+ご近所」という視点を商品企画やマーケティング戦略に取り入れることは、目の前のユーザーだけでなく、その先にいる人々──いわば「社会」の中でどう調和を保ちながら暮らしていくかという姿までを思い描き、カタチにしていくことでもあります。
そうした視点を持つことが、結果として「信頼されるブランド」を育てる第一歩になるのではないでしょうか。
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