ペット市場は今、異業種参入が伸びるフェーズにあります。
生活領域と重なるペット市場では、人間向け事業者の強みが武器になります。
参入が成功しやすい理由と注意点を解説します。
ペット市場はここ数年、異業種プレイヤーの参入が目立つ局面に入ってきています。
実際、国内最大級の展示会「インターペット2025」でも、ペット業界以外の企業による初出展・異業種ブースの増加が注目点として挙げられており、業界の裾野が広がっていることがうかがえます※1。
会場には住宅関連企業のサンゲツや化粧品会社のニッピ、エンタテインメント企業のバンダイナムコテクニカ、スクウェア・エニックスなどが並び、飼い主で賑わっていたのも印象的でした。こうした動きは単なるブームというより、市場構造の変化として捉えるほうが自然です。
市場全体を見ても、ペット関連の支出は堅調に伸び続けています。
飼育頭数に大きな伸びがない一方で、1頭あたりの支出額は増加傾向にあり※2、ペット市場は「数で伸びる市場」から「質で伸びる市場」へ移行している段階だと言えます。
質で伸びる市場では、既存プレイヤーの延長線上にない価値が求められ、異業種の強みがそのまま差別化につながる余地が大きいのです。
背景にあるのは、ペットの“家族化”。
ペットを人生を共にする家族として迎える飼い主が増え、食事・住まい・健康・余暇・移動といった生活のあらゆる場面で、人とペットの暮らしが重なり合うようになってきました。
つまりペット市場は、「専門業界の市場」から、暮らしそのものに寄り添う“生活の市場”へ広がっているのです。
この生活市場化が進むほど、異業種参入はむしろ自然な流れになるでしょう。
<参考>
※1:ぐらんわん!news https://grandwan.com/dog/news250311/
※2:アニコム損保「2024最新版 ペットにかける年間支出調査」https://www.anicom-sompo.co.jp/news-release/2024/20250311/?utm_source=chatgpt.com

異業種参入が“たまたま増えている”のではなく、ペット市場の側に「異業種に開かれやすい構造」があることも見逃せません。
ここでは、その相性の良さを3つの理由に分けて整理します。
①人間の生活領域とペットの生活領域がほぼ一致していること
ペットが“飼育対象”ではなく“生活を共にする家族”になった結果、食品、美容、健康、住宅、観光、移動、エンタメ…といった人間向けに成熟してきた市場の課題や価値が、ほぼそのままペットにも接続されるようになってきています。
たとえば食品会社なら、原料調達の目利き、衛生管理の厳格さ、製造履歴の透明性といった強みが「安心できるフード」という価値に直結します。
美容企業の皮膚科学や低刺激設計の知見は、犬猫の皮膚ケア・被毛ケア領域で強い説得力を持つでしょう。
このように異業種は、すでに持っている強みを“ペット用に翻訳するだけで価値になる”土俵を持っているわけです。
②参入障壁が下がったこと
OEMやD2Cの普及により、大きな設備投資や販路の確保がなくても小ロット・短納期で商品化できる環境が整いました。
とくにフード・おやつ・スキンケア・雑貨などは「試して、改善して、育てる」ができる領域になっており、異業種が“まず一歩目を踏み出しやすい市場”になっています。
参入が増えるのは、このインフラ側の成熟も大きな影響があると言えるでしょう。
③飼い主の“ヒト基準消費”が強まっていること
飼い主の購買基準は年々シビアになり、「自分が食べる・使うものと同等の品質をペットにも」という価値観が前提になりました。
だからこそ、人間向け市場で培った品質基準や安全基準を持つ企業は、“異業種なのに安心できる”という逆転の信頼を獲得しやすい。
この「ヒト基準歓迎」の潮流も、異業種参入の追い風になっています。
異業種参入がうまくいく企業には、共通の“勝ち筋”があります。
それは一言で言えば、既存アセットの“ペット翻訳力”が高いこと。
人間向けで積み上げた価値を、ペットの暮らしに合わせて再設計できる企業ほど成果を出しています。
たとえば住宅・建築会社なら、滑りにくい床材、動線設計、ストレスを減らす間取りなど、暮らしそのものを再設計するペット共生住宅の提供が可能になるのではないでしょうか?
観光・宿泊業なら、「泊まれる」だけでなく、“ペットが楽しく、飼い主は安心して過ごせる体験価値”まで設計した施設ほど支持を獲得しています。
IT領域では、見守り・健康データ・行動の可視化など、人間向けのIoTやヘルスケア思想が、ペットのQOL向上にそのまま接続されています。
つまり成功の要点は、“人間向けの強みをペットの暮らしの課題に変換し、価値として再構成できたか”に尽きるのです。
一方で、参入から数年で撤退してしまう企業があるのも事実です。
その多くは、専門知識がないこと自体より、専門知識の不足を“後回しにしたまま商品化してしまうこと”に原因があるように思います。
犬猫の栄養学や行動特性、心身の構造は当然ですが人間とは大きく違います。
にもかかわらず、
「人で安全なものはペットにも良いはず」
「人向けで売れた素材をそのまま転用しよう」
という発想で設計してしまうと、安全性や実用性の面で簡単に破綻してしまうことも。
さらにペット領域は、広告表現・表示ルールが意外と複雑で、根拠の弱い機能訴求や表記ミスが炎上につながりやすいことにも注意が必要。
“商品が悪い”のではなく、“専門性の不足が信頼を壊してしまう”ケースも多いのです。

異業種参入で成功する企業は、早い段階で専門家と組んでいます。
これは“保険”ではなく、勝つための設計そのものです。
食品会社なら、
原料調達と製造力に、獣医師の栄養設計を掛け合わせる。
美容会社なら、
皮膚科学の知見に、動物皮膚の専門知識を掛け合わせる。
住宅会社なら、
設計力に、行動学や安全面の知見を掛け合わせる。
こうして既存の強みが“ペット仕様に正しく翻訳される”ことで、異業種でありながら、
「むしろ異業種だからこそ信頼できる」というポジションを取れるようになります。
専門家との掛け算は、商品を強くするだけでなく、ブランドそのものの信頼設計になります。
異業種参入で最も強い味方になるのが、獣医師をはじめとした専門家です。
理由は明確です。
まず、人間向け知識をそのまま応用すると危険な領域が多いこと。
犬猫には避けるべき成分や摂取量の基準があり、“良かれと思って入れたものがリスクになる”こともあります。
次に、広告や表現には科学的根拠と規制理解が必要なこと。
異業種はここでつまずきやすく、善意の強い表現ほどリスクになりがちです。
そして、異業種ブランドは飼い主から「本当に大丈夫?」と疑われやすい。
ここで専門家の裏付けがあると、信頼のハードルを一気に越えられます。
獣医師の知見は、品質・安全性・表現のすべてを支え、参入時の“信頼コスト”を大きく下げる装置になります。

ペット市場は拡大基調が続き、とくに健康志向・高齢化・防災意識・家族化などの社会変化によってニーズはさらに増大しています。
そんな中で、ペットと暮らしが重なる“ペット×異業種”の領域には、サービスや商品の提供余地が十分にあります。
飼い主が日常で抱く、
「もっと安心でおいしいフードを選びたい」
「正しいおうちでのケア方法を知りたい」
「ペットと一緒に旅行したい」
「住まいをペット仕様にしたい」
という“生活の悩み”は、まさに人間向け事業の延長線上にある課題。
だからこそ既存アセットを持つ異業種企業は、「すでに答えを持っている市場」に参入するのと近い構造になります。
今のフェーズは、異業種が価値を出しやすい土壌が最も整っている局面と言えるでしょう。
ペット市場は“生活の市場”へ拡張し、異業種にとって大きな伸び代が生まれています。
ただし参入成功の条件は、「自社の強みを活かすこと」と「専門性を取り込むこと」。この両輪が揃って初めて、長く支持されるブランドになります。
異業種企業から見て、ペット領域への参入は“ペット市場の主役になれるチャンス”とも言えます。専門家と共に価値を創りながら、ペットと人の暮らしを豊かにする商品・サービスを形にしていきましょう。
ペット商品に信頼感を与える
獣医師監修サービスを提供しています
ペット商品に信頼感を与える
獣医師監修サービスを
行なっております